このオープン教材では、【つながる・うごく・まもる】という3つの学習目標を設けています。これにより、学習者は湿地についてより深く理解し、持続可能な湿地づくりに役立つ考え方やスキルを養うことができます。
① 【つながる】湿地生態系における人間、動植物や地形の相互関係を理解する。
湿地は、繊細で貴重な自然資源です。水質を浄化する機能から「自然の腎臓(nature’s kidneys)」と呼ばれ、生態系の豊かさから「自然の市場(nature’s supermarkets)」とも表現されます。また、湿地は生活用水や食料、衣食住などを提供し、交通路やエネルギー源としても重要な役割を果たすため、私たちの生活を支える「生活必需品(commodities)」です。さらに、歌や絵画、演劇、映画、アニメーション、マンガ等の「芸術の源泉(source of artistic inspiration)」でもあり、私たちに感動や生きる喜びをもたらします。
このように、湿地の多面的な価値を理解し、自分にとって新しいつながりを見つけ出す(発見する)ことが目標です。
② 【うごく】:複数の湿地を探検し、湿原の遷移に沿った湿原タイプの変化を体感することで、湿地生態系のダイナミクスを理解する。
多彩な湿地には、それぞれの特性に応じた姿かたちをみせます。実は、水田や沿岸域などの人工的な水域も湿地と捉えられ、それらが独特の世界を形成することか「小宇宙」と表現されることもあります。また、独特な環境下において固有の生物群をはぐくむだけでなく、洪水調整、防波堤、水質浄化、気象調節、炭素吸収と蓄積などさまざまな機能を発揮する場としての価値があります。
このように、雄大かつ悠久の時を経て創られた湿地のダイナミックな変化を感じ取り、その変遷の歴史や人間活動の影響を含めた現在の湿地の状態を理解することが目標です。
③ 【まもる】:UAV(ドローン)映像での植生環境調査を実施し、植生を調べ、環境条件との関係を考えることで、科学的思考と問題解決能力を培う。
科学的根拠に基づく事前・事後評価を義務付けた自然再生だけでなく、市民、NPOや民間企業などのあらゆる主体が湿地の再生と保全に取り組むことが大切です。これらの取組みの基本的な流れとしては、生態系の劣化原因の特定や再生の目標設定などがありますが、モニタリング費用の問題や、住民の関心を引きつける人材育成や担い手不足などの課題もあります。
このオープン教材では、VR映像を用いた植生調査法やUAVと360度カメラを使った空撮による湿地情報のアーカイブなど、最先端の技術の体験学習を含んでいます。現在の湿地の状態を維持し、次世代に引き継ぐための再生や保全、そして賢明な利活用を行うためには、持続可能な湿地づくりに関する価値観を身につけ、解決策を考えることが目標です。