第8回 湿地生態系の機能(生態系サービス)


生態系サービスとは、私たちが生物や生態系から得られる様々な恩恵のことを指し、大きく分けて供給サービス・調整サービス・文化的サービスの3つのカテゴリーに分類されます。

生態系(せいたいけい)サービスとは、私たちが 生物や 生態系(自然の しくみ)から 得られる いろいろな 恵み(めぐみ)のことです。大きく 分けて、次の 3つに 分けられます。

供給(きょうきゅう)サービス:食べものや 材料などを あたえてくれる
調整(ちょうせい)サービス:気候や 水の ながれを 整えて くらしを 守る
文化的(ぶんかてき)サービス:美しい 風景や レジャーなどで 心を 豊かに する

供給サービス:いろんな資源を与えてくれる


湿地は、私たちの生活に必要なさまざまな資源を生み出す場所です。例えば、湿地に生育する植物は、日用品や伝統工芸に利用されてきました。
特にフェンには、日本の暮らしと深く結びついた種が多く育ちます。ヨシは、「葦簀」や「簾」の材料となり、スゲ類は「蓑」や「菅笠」、しめ縄に使われます。また、畳の原料として知られるイグサも湿地で育つ代表的な植物です。
さらに、湿地には食料となる魚や貝類が生息し、薬草として利用される植物もあります。また、湿地の水を利用した農業も発展してきました。例えば、棚田や水車を活用した伝統的な農業技術は、湿地の豊富な水資源に支えられています。

しつげんは、わたしたちの くらしに 必要な いろいろな 材料や 恵み(めぐみ)を 生みだしてくれる 場所です。
たとえば、しつげんに 生えている 植物は、日用品や 昔からの 伝統工芸(でんとうこうげい)に 使われてきました。
とくに フェンには、日本の くらしと 深く つながっている 植物が たくさん そだちます。

ヨシ:「葦簀(よしず)」や「簾(すだれ)」の 材料に なります。
スゲの なかま:「蓑(みの)」や「菅笠(すががさ)」、しめ縄(なわ)に 使われます。
イグサ:畳(たたみ)の 原料(げんりょう)として 有名な、しつげんで そだつ 代表的な 植物です。

さらに、しつげんには 食べものに なる 魚や 貝が くらしていたり、薬(くすり)として 使われる 植物も あります。

また、しつげんの 水を つかった 農業(のうぎょう)も 発達してきました。たとえば、棚田(たなだ)や 水車(すいしゃ)を つかった 昔ながらの 農業の 技術も、しつげんの たっぷりある 水に 支えられています。

四谷の千枚田(愛知県新城市)©小山舜二

調整サービス:くらしを守る


湿地生態系の調整機能から得られる恩恵として、以下のようなものがあります。

気候の調節:湿地は温度や湿度を安定させる役割を持ち、気候変動の影響を和らげます。
水の調節:湿地は「天然の水がめ」として機能し、大雨の際には水を蓄え、乾燥時には水を供給します。
水の浄化:湿地の植物や微生物が汚れた水をろ過し、きれいな水を生み出します。
自然災害の緩衝:湿地は飛砂や強風、水害、潮害、雪害、土砂災害などを防ぐ役割を果たします。

特にマングローブ林は、津波の流速を低下させたり、漂流物を捕捉することで被害を軽減します。また、泥炭地は大量の二酸化炭素を貯蔵し、気候変動の緩和に貢献しています。

実際に、泥炭地が貯蔵する二酸化炭素の量は、世界中の森林が貯蔵する量の2倍以上にもなります。


しつげんが わたしたちの くらしや 自然を まもる 働き(調整サービス)には、つぎのような ものが あります。

気候(きこう)の ちょうせつ:あつさや さむさ、しつどを たもって、急な 気候の 変化を やわらげます。
水の ちょうせつ:湿地は 天然の 水がめ の 役割を します。大雨が ふった ときは 水を たくわえ、ひでり(乾燥)の ときには 水を くばります。
水の じょうか(きれいにする):しつげんに 生えている 植物や 小さな 生き物(微生物)が、よごれた 水を きれいに します。
自然災害(しぜんさいがい)を ふせぐ:風で くずれる すな(飛砂)や つよい風、大水(水害)、たかい 波(潮害)、大雪(雪害)、山くずれ(土砂災害)などを ふせぐ 役割を します。
とくに マングローブの 林は、津波(つなみ)の スピードを おとしたり、ながれてくる ものを つかまえたりして 被害(ひがい)を 小さく します。

また、泥炭地(でいたんち)は、たくさんの 二酸化炭素(にさんかたんそ)を つちの中に ためこむことで、地球温暖化(ちきゅうおんだんか)を ふせぐのに 大きく 役立っていると言われています。
泥炭地が ためこんでいる 二酸化炭素の 量は、世界中の 森林(もり)が ためこんでいる 量の 2倍以上にも なるとも言われています。

文化的サービス:文化を豊かにする


湿地は、わたしたちの文化や生活にも大きな影響を与えてきました。

レクリエーション:湿地でのカヌー体験やバードウォッチングなど、自然を楽しむ活動が行われています。
景観:湿地の美しい風景は、多くの人々を魅了し、観光資源にもなっています。
教育・普及啓発:湿地は自然環境や生態系について学ぶ場として活用され、環境教育のフィールドとしても重要です。
伝統文化:湿地に関わる信仰や祭りが各地で見られます。


湿原(しつげん)は、わたしたちの 文化や くらしにも 大きな 影響を あたえてきました。

レクリエーション:しつげんで カヌーに のったり、鳥を 観察(バードウォッチング)したりして、自然を たのしむ 活動が 行われています。
景観(けいかん):しつげんの 美しい 風景は、たくさんの 人々を ひきつけ、観光(かんこう)の 大切な 資源にも なっています。
教育・普及啓発(ふきゅうけいはつ):しつげんは 自然環境や 生き物の しくみ(生態系)について 学ぶ 場所として つかわれ、環境教育の フィールドとしても 重要です。
伝統文化(でんとうぶんか):しつげんに かかわる お祈りや お祭りが、いろいろな 場所で 見られます。

西湖HOBIE(カヌー)エコツアー(2024年11月)

例えば、島根県吉賀町では「水神祭り」が行われています。この祭りでは、藁で作った龍を大木に括りつけ、それを水源とされる川に入れることで、龍が天に昇る様子を表現し、雨を祈願します。

また、湿地の風景や生き物は、芸術や文学にも影響を与えてきました。中世以降、浮世絵には湿地の植物(花菖蒲、藤など)や鳥(雁、鶴など)が多く描かれました。さらに、近代の日本画や洋画にも湿地の風景が描かれ、人々の生活と自然とのつながりが表現されています。


例えば、島根県吉賀町(よしかちょう)では 水神(すいじん)祭り が 行われています。この お祭りでは、わらで 作った 龍(りゅう)を 大きな 木に くくりつけ、それを 水源(すいげん)とされる 川に 入れることで、龍が 天に のぼる 様子を あらわし、雨が ふるように お祈りします。

また、湿地(しっち)の 風景や 生き物は、芸術(げいじゅつ)や 文学にも 影響を あたえてきました。中世より あとの 時代(江戸時代など)、浮世絵(うきよえ)には しっちに 生える 花(ハナショウブや フジなど)や 鳥(ガンや ツルなど)が たくさん 描かれました。
さらに、近代(きんだい)の 日本画や 洋画(西洋風の 絵)にも しっちの 風景が 描かれ、人々の くらしと 自然との 深い つながりが あることがわかります。


国内における湿地の生態系サービスを経済的な価値に換算した例があります。環境省の試算によると各サービス(恩恵)の評価額を合計すると年間約1兆円にもなるとのことです。

日本での しっちの 生態系サービス(恵み)を お金に 換算した 例が あります。
環境省(かんきょうしょう)の 試算によると、それぞれの サービス(恵み)の 評価額を 合計すると、1年間に 約1兆円にも なるとのことです。
湿地の生態系サービスとその経済価値(環境省試算)より作成(金額は評価額)

このように、湿地生態系はわたしたちの暮らしや文化、自然環境に欠かせない存在です。生態系サービスを理解し、大切にすることで、湿地を未来の世代へと引き継いでいきましょう。

このように、湿地(しっち)の 生態系は わたしたちの くらしや 文化、自然環境に かかせない 存在(そんざい)です。
生態系サービス(恵み)を 理解して 大切に することで、しっちを 未来の 世代へと 引き継いでいきましょう。

参考図書
『図説 日本の湿地 ―人と自然と多様な水辺』、日本湿地学会監修、朝倉書店、2017年
『湿地の科学と暮らしー 北のウェットランド大全』、矢部和夫・山田浩之・牛山克巳 監修、北海道大学出版会、2017年

本ページに掲載している写真の一部は、一般社団法人 奥三河観光協議会(愛知県新城市)、朝倉市商工観光課、吉賀町観光協会よりご提供いただいたものです。