第3回 湿原の発達(湿生遷移)

湿原しつげん発達はったつ必要ひつよう条件じょうけんは何でしょうか。まずは、水が豊富ほうふにあることがげられます。そのほかには、酸性さんせい養分ようぶんとぼしい (とくに窒素ちっそ)、ミネラルにとぼしい(たとえば、Mg、 Ca等)という特異的とくいてき水質すいしつ環境かんきょう必要ひつようとなります。

この豊富ほうふな水や養分ようぶんとぼしい環境かんきょう条件じょうけんたすためには、養分ようぶんやミネラルの少ない水を供給きょうきゅうする雨水が重要じゅうよう役割やくわりたします。こうした雨水だけで土壌どじょうたされ発達はったつしてゆく湿原しつげんのことを雨水涵養かんようせい(ombrotrophic)の湿原しつげんといいます。

その雨水涵養かんようせい湿原しつげんもっと一般的いっぱんてきなものとしてRaised bog(レイズドボッグ)があります。ボッグの詳細しょうさいについては後に解説かいせつしますが、レイズドボッグはひっくり返したお皿のようにわずかにがった地形(ドームじょう)に発達はったつするのが大きな特徴とくちょうです。数キロメートルでわずか数十センチから数メートルのドームで、山のような明瞭めいりょうな地形ではありません。わずかな高さのドーム地形ではありますが、がった部分では雨水しか供給きょうきゅうされません。雨水は、養分ようぶんとミネラルにとぼしいため、大型おおがたの植物が育たず、そのひん栄養えいようひんミネラルの環境かんきょう生存せいぞん・生育できるミズゴケが優占ゆうせんする湿原しつげんになります。

レイズドボッグは、次のようにして発達はったつするといわれています。

レイズドボッグの発達過程


あさい湖の状態じょうたい
② はじめにヨシなどのマットが発達はったつ。そして、それらの遺体いたい堆積たいせきしはじめ (泥炭でいたん土壌どじょう形成けいせい)、Fen(フェン)が出現しゅつげんします。フェンについては後に解説かいせつします。
③ スゲるい、イグサるい、イネ科草本、小型こがた木本がみ、それらが泥炭でいたんとしてさらに堆積たいせきし、典型的てんけいてきなフェンが発達はったつします。
泥炭でいたん土壌どじょうがさらにあつくなると、植物の根は元々の湖水(ミネラルにむ地下水)に接触せっしょくできなくなります。その結果けっか養分ようぶんは雨水からしかられなくなり、養分ようぶんやミネラルにきわめてとぼしい環境かんきょう形成けいせいされます。
⑤ ミズゴケが進入しはじめます。そしてついにフェンはレイズドボッグとなります。ミズゴケはきわめて養分ようぶんとぼしい雨水でも生存せいぞん可能かのうです。
※レイズドボッグの発達はったつ過程かていには地下水の湧水ゆうすい関係かんけいしているとの報告ほうこくもあります。

釧路くしろ湿原しつげん(温根内・赤沼あかぬま周辺しゅうへん)のバーチャルツアーでレイズドボッグをさがしてみましょう。同心円・同心楕円だえんじょうに植生がことなっている、色がことなる植生でかこまれている場所が多いです。